内臓脂肪と老化の関係を科学的に整理|健康寿命を延ばすための実践ガイド
執筆:健康運動指導士 中村優介
結論
内臓脂肪は、血管や肝臓、筋肉など臓器の働きを静かに傷め、慢性的な炎症とインスリン抵抗性を通じて老化の速度を上げる。体重が同じでも内臓脂肪が多いほど、見えない「血管の老い」と「代謝のくずれ」が進みやすい。対策の柱は、適切なエネルギー赤字、たんぱく質の確保、全身の筋トレ、有酸素と歩数、睡眠、食物繊維、アルコール管理である。
内臓脂肪とは何か
お腹の奥で臓器の周りにつく脂肪を指す。皮下脂肪と違い、ホルモン様物質や炎症物質を多く放出し、肝臓や筋肉へ脂質を送り込みやすい。検査がなくても腹囲や体型で推定でき、腹囲と身長の比(ウエスト÷身長)が0.5未満であればリスクは下がりやすい。内臓脂肪面積が100cm²を超えると代謝異常の頻度が高まることが知られている。
老化が進む仕組み
第一に炎症である。内臓脂肪は炎症性の物質を放ち、体のあちこちで微小な炎症を長く維持させる。これが血管の内側を傷つけ、動脈硬化の始まりを早める。第二にインスリン抵抗性である。筋肉と肝臓で糖の取り込みが落ち、血糖と中性脂肪が上がりやすくなる。第三に脂肪肝である。肝臓に脂肪がたまると解毒や代謝の効率が下がり、ホルモンのバランスも崩れやすい。第四に筋肉の質の低下である。脂肪が筋線維の間に入り込むと、同じ筋量でも力が出にくく、転倒や疲れやすさにつながる。
健康寿命への影響
内臓脂肪が多い人は、心血管病、2型糖尿病、脂肪肝関連の肝障害のリスクが上がりやすい。記憶や気分にも間接的な影響があり、睡眠の質やいびきが悪化することもある。見た目では胴回りの厚み、血色のくすみ、むくみやすさとして現れやすい。
セルフチェックの数値
腹囲÷身長は0.5未満を目標にする。腹囲は立位で息を軽く吐いた自然呼気時に臍の高さで測る。空腹時の中性脂肪は150mg/dL未満、空腹時血糖は100mg/dL未満、血圧の家庭測定は朝の上が125mmHg未満を目安にする。これらがそろって目標内であれば、内臓脂肪リスクは下がりやすい。
減らすための実行プラン
最優先は一日の摂取エネルギーを維持必要量から500kcal差し引くこと。筋肉を守るために体重1kgあたり1.6gのたんぱく質を毎日満たす。週2〜3回の全身筋トレで下半身・押す・引く・ヒンジの基本動作を行い、各部位は合計12セット/週を目標にする。歩行は1日1万歩を基準にし、長く座る日は1時間ごとに3分立って歩く。有酸素は息が弾む速歩や自転車を週150分。睡眠は毎日7.5時間を確保し、起床時刻を揃える。食物繊維は1日20gを下回らないようにして、主食は未精製のものを選ぶ。アルコールは週2回以内、各回ビール中瓶1本相当までに抑える。これらを続けると体重は週平均で約0.5%ずつ下がり、内臓脂肪は8〜12週で目に見えて減りやすい。
食事設計の要点
朝は高たんぱくでスタートし、昼は主食とたんぱく質と野菜を揃え、運動後にたんぱく質30gを追加し、夜は脂質を控えめにして野菜と汁物で満腹感を作る。飲料は水やお茶を中心にし、砂糖入り飲料は0本にする。外食が続く日は、最初の一品を野菜か豆腐に固定し、揚げ物より焼き物や蒸し物を選ぶ。
高齢者への配慮
筋肉の減りやすさを考慮し、赤字は無理をせず−300〜−500kcalの範囲で設定し、たんぱく質1.6g/kg/日を守る。転倒予防のために、かかと上げ、椅子スクワット、ヒップヒンジを痛みのない範囲で行い、ふらつきがある日は必ず椅子や壁に触れて実施する。
女性ホルモンと内臓脂肪
更年期以降は女性ホルモンの低下で内臓脂肪が増えやすくなる。運動と睡眠の一貫性、たんぱく質と食物繊維の確保、アルコールの節度が特に重要である。体重の増減を急がず、前述の数値を地道に満たすことが最短ルートになる。
よくある誤解の修正
お腹周りだけをねらった運動で内臓脂肪だけが減るわけではない。短期の断食や極端な糖質ゼロは一時的に体重が落ちても筋肉と体調を損ないやすい。サプリだけで内臓脂肪を特異的に減らす確実な方法はない。数字と習慣の積み上げが唯一の近道である。
到達目安と判断
まず腹囲÷身長を0.5未満にする。次に朝の家庭血圧、空腹時血糖、中性脂肪を目標内にそろえる。体重が停滞したら、摂取をさらに−150kcalにするか、歩数を+2000歩にするか、どちらか一つだけ足す。3週間で変化がなければもう一つを追加する。
注意
持病や服薬がある場合は主治医と相談のうえ実施する。お腹の急な痛み、黄ばみ、強い倦怠感などがある場合は肝臓の病気も考えられるため、自己判断での継続は避ける。
まとめ
内臓脂肪は炎症と代謝のくずれを通じて老化を早めるが、日々の数値をそろえれば必ず減らせる。エネルギー赤字−500kcal、たんぱく質1.6g/kg/日、筋トレ週2〜3回、有酸素150分、歩数1万、睡眠7.5時間、食物繊維20g、アルコール節度の八つを固定し、腹囲÷身長0.5未満を最初のゴールにする。
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実践の手順は動画がわかりやすい。解説は順次公開する。YouTube「おにマス∞ YUSUKE」/記事まとめはnknktraining.com。


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