コンカレントトレーニングの科学的な考え方|筋力と持久力を両立させる実践ガイド
執筆:健康運動指導士 中村優介
コンカレントトレーニングとは何か
コンカレントトレーニングとは、筋力トレーニングと有酸素運動を同じ期間、または同じ週、同じ日に組み合わせて行う方法である。筋肥大や筋力アップを狙いながら、心肺機能や持久力、脂肪燃焼も同時に高めたい人にとって現実的な選択肢になる。
問題点「干渉効果」とは
筋力トレーニングは筋肉を強くする刺激、有酸素運動は長く動き続ける力を高める刺激であり、体内では一部で逆向きの適応が起こることがある。強度が高い有酸素運動を大量に重ねると、筋力や筋肥大の伸びが鈍くなる現象が報告されている。これを干渉効果と呼ぶ。特に長時間の持久走を高頻度で行う場合、太もも前側など同じ部位を酷使しやすく、回復が追いつかず筋肥大が止まりやすい。このため「順番」「時間間隔」「強度設定」が鍵になる。
順番の基本ルール
筋力と筋肥大を優先したい場合は、筋トレを先、有酸素を後に行う。理由は、筋トレ時に十分な力を出すためである。持久力を優先したいランナーや持久系選手は、インターバル走やペース走など、競技に近い有酸素を先に行い、その後に補強として筋トレを入れる。どちらを優先するかは目的で決める。筋力と持久力を五対五で両立させたい一般の人は、同日に行う場合でも「その日の主目的」を先に実施し、逆側はやや控えめな強度にする。
時間間隔の考え方
同じ日に両方行う場合、理想は三時間以上あける。難しい場合でも、少なくとも筋トレ直後に長時間の激しい有酸素を入れない。朝に有酸素、夜に筋トレ、またはその逆という分け方も有効である。週単位では、きつい有酸素の日と高重量筋トレの日を重ねすぎない工夫が重要である。
有酸素運動の強度と種類
筋肉量を落としたくない場合、有酸素は中等度までを中心にする。会話がぎりぎりできる速さのジョグ、バイク、クロストレーナーなどが適する。長時間のゆっくり走を高頻度で行うと、回復不足になり筋肥大の妨げになりやすい。ダッシュや坂道ダッシュなど高強度を入れる場合は回数を絞り、週一から二回にとどめると干渉を抑えやすい。
筋トレ側の設計ポイント
下半身を使う有酸素を多く行う場合でも、スクワットやデッドリフトなどの基本種目は残す。ただしボリュームを冷静に管理する。追い込みすぎて歩行やランに影響が出るほどの疲労を毎回残すと、コンカレント全体が破綻しやすい。目標が筋肥大なら、一週間あたり各部位十から二十セット程度を目安とし、有酸素量に合わせて微調整する。
目的別モデルプラン
筋肥大優先型では、週三から四日の筋トレを軸にし、その日の後半かオフ日に二十分前後の軽めの有酸素を入れる。マラソンや持久系優先型では、ポイント練習日(ペース走、インターバル)の後に下半身補強を短時間で行い、別日に上半身中心の筋トレをまとめる。一般の健康志向型では、筋トレ週二から三回、有酸素週三回程度を交互に配置し、疲労が強い日はどちらか一方だけにする。
高齢者や初心者への適用
高齢者や運動初心者では、重い負荷よりも「動きの質」と「安全性」を優先する。椅子からの立ち上がり、階段昇降、踵上げなど筋力トレーニング要素と、十分な休憩をはさみながらの歩行や自転車こぎを組み合わせる。ここでも同じで、一日に詰め込みすぎず、息切れやふらつきが出る手前で止めることが重要である。
コンカレントトレーニングを成功させる条件
エネルギー不足が続くと筋量も持久力も伸びにくい。特にタンパク質不足は筋力低下の原因になるため、体重一キログラムあたり一・六グラム前後を目安に摂取する。睡眠時間が短い場合も両方の効果が落ちるため、六から七時間以上を確保する。疲労感、筋肉痛、心拍の戻りなどを定期的に確認し、明らかに回復が遅いときは有酸素か筋トレのどちらかを削る判断が必要になる。
よくある失敗パターン
毎回「全てを全力」で行う。長時間の有酸素直後に高重量筋トレを行う。毎日同じ部位に負荷をかけ続ける。食事量を極端に減らしたまま二つを同時に続ける。これらは全て干渉効果とオーバーワークを強める典型であり、避けるべきである。
まとめ
コンカレントトレーニングは「組み方」が全てである。目的の優先順位を決め、順番、時間間隔、強度、週間の流れ、栄養と休養を整理すれば、筋力と持久力を同時に高めることは十分可能である。
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