「一度はフルマラソンを完走してみたい」
そう思って走り始めても、42.195kmという距離を前にすると、何から練習すればよいのか分からない方も多いと思います。
毎日走った方がよいのか。最初から長い距離を走るべきなのか。どのくらいの速さで走ればよいのか。
初マラソンの練習で大切なのは、速く走ることよりも、無理なく走る日を積み重ね、本番まで故障せずに準備を続けることです。
僕は健康運動指導士として、福岡マラソン完走チャレンジなどでランニング指導に携わってきました。自身のフルマラソン記録は3時間27分ですが、初心者への指導ではタイムよりも「安全にスタートラインへ立ち、自分のペースで完走を目指すこと」を重視しています。
この記事では、初マラソン完走を目指す初心者が、12週間の準備で意識したい7つのポイントを解説します。
初マラソンは12週間で準備できるのか
すでに週2〜3回のウォーキングやジョギングを行っている方であれば、12週間は一つの準備期間になります。
ただし、12週間あれば誰でも必ず完走できるという意味ではありません。
- 現在ほとんど運動をしていない
- 連続して30分歩くことが難しい
- 膝、腰、足首などに痛みがある
- 体重増加や持病による運動上の不安がある
- 大会の制限時間が短い
このような場合は、12週間より長い期間を確保し、まずウォーキングと短いジョギングで基礎体力をつくる方が安全です。
大会日から逆算するだけでなく、現在の体力から必要な準備期間を考えましょう。
初マラソン完走を目指す7つのポイント
1.最初に大会の制限時間と目標を確認する
同じフルマラソンでも、大会によって制限時間や関門時刻は異なります。
まず大会公式サイトで、次の項目を確認してください。
- 全体の制限時間
- 途中関門の場所と閉鎖時刻
- スタート地点を通過するまでの時間差
- 給水所とトイレの位置
- コースの高低差
初マラソンでは、「歩かずに走り切る」ことにこだわる必要はありません。給水所や上り坂で計画的に歩く方法もあります。
目標は「完走を目指す」とし、そのために必要な平均ペースを把握します。
| 目標時間 | 1km平均ペースの目安 |
|---|---|
| 5時間 | 約7分07秒 |
| 6時間 | 約8分32秒 |
| 7時間 | 約9分57秒 |
実際の大会では、給水、トイレ、混雑、スタートまでの待ち時間などが加わります。計算上の平均ペースだけでなく、止まる時間も含めて考えましょう。
2.速さより、楽に動き続ける力をつける
初心者が最初から速く走ると、息が上がり、脚への負担も大きくなります。
完走を目指す段階では、短時間の全力走より、会話ができる程度の楽なペースで動く時間を増やすことが優先です。
走ると苦しくなる方は、ウォーキングとジョギングを交互に行って構いません。
例えば、
- 5分歩いて1分走る
- 3分歩いて2分走る
- 10分走って2分歩く
というように、現在の体力に合わせて調整します。
歩きを入れることは失敗ではありません。最後まで動き続けるための手段です。
3.週3回を基本に、練習の役割を分ける
初マラソンの準備で、毎日走る必要はありません。
初心者は週3回程度から始め、練習日と回復日を分けた方が続けやすくなります。
基本的な役割は次の3つです。
- 短く楽に走る日:無理のないペースで走る習慣をつくる
- 歩きと走りを組み合わせる日:フォームとリズムを整える
- 長く動く日:ゆっくりでも動き続ける時間を延ばす
1週間の一例です。
| 曜日 | 内容 |
|---|---|
| 月曜日 | 休養 |
| 火曜日 | 楽なジョギングまたはウォーク&ラン |
| 水曜日 | 軽い筋力トレーニング |
| 木曜日 | 短いジョギング |
| 金曜日 | 休養 |
| 土曜日または日曜日 | ゆっくり長く動く練習 |
仕事や家庭の予定に合わせて曜日を変えても構いません。重要なのは、負荷の高い日を続けないことです。
4.長い距離は少しずつ増やす
フルマラソンの完走には、長時間動き続けることへの慣れが必要です。
しかし、練習初期から20kmや30kmを走ると、筋肉、腱、関節への負担が急に増えます。
最初は距離ではなく時間で考え、30分、45分、60分と、ゆっくり動く時間を段階的に延ばします。
毎週必ず距離を増やす必要はありません。疲労や痛みが残る週は、同じ時間を繰り返すか、短くします。
大会前に長い距離を経験することは大切ですが、全員が練習で42.195kmを走る必要はありません。最長距離は、走歴、体力、回復力、大会までの期間に応じて決めます。
5.脚だけでなく、体幹とお尻を鍛える
ランニングは走る練習だけでなく、身体を支える筋力づくりも重要です。
初心者が取り入れやすい種目は、次のとおりです。
- 椅子を使ったスクワット
- ヒップリフト
- かかとの上げ下げ
- サイドステップ
- 無理のない範囲でのプランク
週1〜2回、各種目を少ない回数から始めます。翌日のランニングに強い筋肉痛が残るほど追い込む必要はありません。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」でも、成人に対して筋力トレーニングを週2〜3日行うことが推奨されています。ただし、マラソン練習中は走行量とのバランスを取り、個人の体力に合わせて調整してください。
6.休養も練習の一部として考える
走った直後に体力が向上するわけではありません。運動による刺激を受けた後に休養し、身体が回復する過程が必要です。
次のような状態がある日は、距離や強度を下げます。
- 起床時から脚が重い
- 同じペースなのに息が上がる
- 睡眠不足が続いている
- 歩くだけでも痛みがある
- 体調不良や発熱がある
予定どおりにできなかった練習を、翌日にまとめて行う必要はありません。
休んだ後は、短いウォーキングや楽なジョギングから再開しましょう。
7.本番で使う物は練習中に試す
大会当日に初めて使う物を増やすと、思わぬトラブルにつながります。
- ランニングシューズ
- 靴下
- ウェア
- 補給食
- 飲み物
- 日焼け・雨・寒さ対策
これらは、長く動く練習の日に試してください。
水分や補給食の必要量には、気温、湿度、発汗量、走る時間などによって個人差があります。大会当日だけ特別な方法を試すのではなく、練習中に自分に合う取り方を確認します。
12週間の練習は4段階に分ける
第1段階:1〜3週目
目標は、走ることよりも週3回身体を動かす習慣をつくることです。
ウォーキングと短いジョギングを組み合わせ、1回20〜40分程度から始めます。翌日に強い痛みや疲労を残さない量を探します。
第2段階:4〜6週目
楽なペースで動く時間を少しずつ延ばします。
週末など時間を確保しやすい日に、他の日より長く動く練習を入れます。速く走ることより、呼吸とフォームを乱さず継続することを意識します。
第3段階:7〜10週目
大会本番を想定し、長時間動く経験を増やします。
給水、補給食、ウェア、シューズも試します。長い練習の翌日は休養か軽い運動にし、回復を優先してください。
第4段階:11〜12週目
大会直前に練習量を急に増やしても、体力を大幅に高めることは難しく、疲労が残る可能性があります。
練習時間を減らしながら、短いジョギングで身体の動きを保ちます。新しいシューズ、補給方法、強度の高い筋トレなどは避けます。
夏に練習する場合の注意点
秋のマラソン大会に出る場合、走り込みの時期が夏と重なることがあります。
暑い環境では、同じペースでも心拍数や体温が上がりやすく、身体への負担が大きくなります。
- 気温だけでなく、湿度とWBGTを確認する
- 早朝や日没後など、比較的涼しい時間を選ぶ
- 日陰や給水場所のあるコースを選ぶ
- 暑い日は距離やペースを下げる
- 条件が厳しい日は屋内運動へ変更する
めまい、頭痛、吐き気、反応の鈍さ、異常な発汗などがある場合は運動を中止し、涼しい場所へ移動してください。暑熱環境では、予定の達成より安全を優先します。
初心者に多い5つの失敗
1.毎回速く走る
毎回タイムを競うと疲労が抜けにくくなります。多くの練習は、余裕を持って終えられるペースで行います。
2.走れなかった分を取り戻す
休んだ翌日に予定を詰め込むと、急な負荷増加につながります。再開日は短く楽な運動から戻します。
3.痛みを我慢して走る
走り始めの軽い筋肉痛と、動作のたびに強くなる局所的な痛みは分けて考える必要があります。
歩行でも痛む、腫れがある、同じ場所の痛みが続く場合は走るのを中止し、必要に応じて医療機関へ相談してください。
4.長い距離だけ練習する
長距離練習は必要ですが、それだけでは疲労がたまります。短いジョギング、筋力トレーニング、休養を組み合わせましょう。
5.大会直前に追い込む
直前の走り込みで、それまでの不足を一気に埋めることはできません。大会前は疲労を抜き、体調を整えることを優先します。
運動を中止して相談したい症状
次のような症状がある場合は、無理に練習を続けないでください。
- 胸の痛みや圧迫感
- めまい、意識が遠のく感覚
- 普段と異なる強い息苦しさ
- 動悸が長く続く
- 歩行でも強くなる脚や関節の痛み
- 発熱や強い体調不良
持病がある方、治療中の方、医師から運動について指示を受けている方は、その指示を優先してください。
この記事は一般的な運動情報であり、個別の診断や治療、完走を保証するものではありません。
12週間の具体的な練習表が必要な方へ
「考え方は分かったけれど、毎週どのくらい走ればよいか決められない」という方に向けて、週3回を基本にした12週間の練習プログラムを準備しています。
週ごとの練習時間、長く走る日の進め方、疲労や痛みがある場合の調整、本番前の確認表まで、実践しやすい形にまとめます。
「初マラソン完走を目指す12週間練習プログラム」をnoteで読む
まとめ
初マラソン完走のために大切なのは、一度に長い距離を走ることではありません。
- 大会の制限時間と目標を確認する
- 速さより、楽に動き続ける力をつける
- 週3回を基本に練習の役割を分ける
- 長い距離は少しずつ増やす
- 体幹とお尻を含めた筋力をつける
- 休養も練習の一部にする
- 本番で使う物を練習中に試す
12週間という期間は、完走のための一つの目安です。現在の体力と生活に合う量から始め、疲労や痛みに応じて調整してください。
本番まで継続できる計画こそ、初マラソン完走に近づく計画です。
この記事を書いた人
健康運動指導士 中村優介
福岡マラソン完走チャレンジ講師。フルマラソン自己ベスト3時間27分。健康教室やランニング教室、競技選手のフィジカル指導などに携わり、「疲れず、老けず、動ける身体」をテーマに、科学的根拠と10年の指導経験から発信しています。


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